月間の広告費30万円。ROAS(Return on Advertising Spend:広告費用対効果)は150%。つまり、30万円を使って45万円の売上。粗利率が40%だとすると、粗利は18万円で、広告費を差し引けば12万円の赤字です。
これは、ある美容系店舗様がRPP広告(楽天プロモーションプラットフォーム:楽天市場内の検索連動型広告)の運用改善に着手する前の実際の数字です。アクセスは来ている。クリックもされている。なのに利益が残らない。この状況に心当たりのある店長さんも多いのではないでしょうか。
本記事では、RPP広告の費用対効果を最大化するための入札単価の考え方と、無駄なクリックを防ぐ除外設定の実践方法を解説します。
なお、RPP広告は楽天市場の店舗運営における施策のひとつです。出店から売上拡大までの全体像を先に把握したい方は、楽天市場の店舗運営 完全攻略ガイド|出店から売上拡大までをご覧ください。
RPP広告が「垂れ流し」になる店舗に共通する3つのパターン
RPP広告の運用で利益が出ていない店舗には、決まって共通したパターンがあります。自店舗の運用状況と照らし合わせながら確認してみてください。
パターン1:全商品一律の入札単価で放置している
RMS(楽天市場の店舗管理システム)の広告管理画面でCPC(Cost Per Click:クリック単価)を一律50円に設定し、そのまま何か月も触っていない。商品ごとの利益率も転換率も違うのに、入札単価だけは同じ。結果として、利益率の低い商品にも高い広告費がかかり、全体のROASが沈んでいきます。

パターン2:除外キーワードを一切設定していない
RPP広告は、商品名に含まれるキーワードをベースに配信対象が決まります。除外設定をしていなければ、店舗側が意図していない検索にまで広告が表示され、購入につながらないクリックに課金され続けます。この問題の具体的な対策は、後述の「除外設定」のセクションで詳しく解説します。
パターン3:RPP広告の目的が「売上を作ること」だけになっている
これは最も根深い問題です。RPP広告の真の価値は、売上を作ることそのものではなく、広告経由で作った販売実績をテコにして、自然検索での順位を引き上げることにあります。この視点が抜けていると、RPP広告をいつまでも止められない「広告依存体質」から抜け出せなくなります。
楽天SEOの教科書|検索順位を上げる3つのアルゴリズム要素でも解説したとおり、楽天市場の検索アルゴリズムは「直近の販売実績」を最も重視します。つまり、RPP広告で短期的にアクセスと販売件数を集中させれば、それがそのまま自然検索の順位改善につながります。自然検索で上位に表示されるようになれば、広告に頼らなくてもアクセスが入る状態が作れます。
この考え方を持つと、RPP広告の運用方針が変わります。「広告でいくら売れたか」ではなく、「広告をきっかけに、自然検索からの売上がどれだけ伸びたか」が本当の成果指標になります。
あるインテリア雑貨の店舗様では、RPP広告のROASだけを見ると400%程度でした。しかし、RPP広告で販売実績を積んだことで主力キーワードの自然検索順位が3ページ目から1ページ目に上がり、広告を含めた全体の売上は月商ベースで1.8倍に成長しました。広告単体のROASだけでは見えない、この「波及効果」こそがRPP広告の本当の価値です。
利益を残す入札単価の決め方 ― 「なんとなく50円」からの卒業
ここからは具体的な運用方法に入ります。まずは、多くの店舗様が悩む「入札単価をいくらに設定すべきか」という問題です。
RPP広告の入札単価は、高く設定すれば検索結果の上位に表示されやすくなりますが、当然クリックあたりのコストも上がります。逆に低すぎると、そもそも表示されずにクリックが発生しません。「では、いくらが正解なのか」。その答えは、商品ごとの利益構造から逆算することで見えてきます。
ステップ1:目標ROASを商品ごとに設定する
入札単価を決める前に、まず「この商品の広告運用で、最低でもどれくらいのROASが必要か」を明確にしておく必要があります。
計算のベースになるのは粗利率です。例えば、販売価格5,000円で粗利率が40%の商品であれば、粗利は2,000円。広告費が粗利を超えなければ利益が残るわけですから、最低限のROASは「販売価格 ÷ 粗利 = 5,000 ÷ 2,000 = 250%」になります。つまり、ROAS250%を下回ると赤字、250%以上なら黒字というラインです。
ただし、これは「トントン」のラインであって、ここから人件費や物流費などの固定費も賄う必要があります。実務上は、目標ROASを最低ラインの1.5〜2倍に設定するのが現実的です。先ほどの例であれば、目標ROASは375〜500%になります。
代表的な価格帯で、最低ROASと現実的な目標ROASの目安をまとめたのが下の早見表です。

あなたの店舗の主力商品は、この早見表のどこに当てはまりますか?
この早見表を見てわかるとおり、粗利率が低い商品ほど目標ROASが高くなり、RPP広告で利益を出すハードルが上がります。粗利率20%台の商品は、よほど転換率が高くない限り、RPP広告の対象から外すことも検討すべきです。
ステップ2:転換率から「許容CPC」を算出する
目標ROASが決まったら、次に「1クリックあたりいくらまで払えるか」を計算します。計算自体はシンプルですが、これを全商品でやっている店舗は意外と少数派です。
許容CPC = 販売価格 × 転換率 ÷ 目標ROAS
例えば、販売価格5,000円、転換率3%、目標ROAS400%の場合、許容CPC = 5,000 × 0.03 ÷ 4.0 = 37.5円です。つまり、1クリック37円以下に入札単価を抑えれば、目標ROASを達成できる計算になります。
ここで重要なのは、転換率は商品ごとに大きく異なるという点です。RMSのアクセス解析から、商品ごとの転換率を確認し、それぞれに適した入札単価を設定してください。全商品一律のCPC設定は、利益率の異なる商品を同じ財布で管理しているようなもので、必ずどこかに無理が出ます。

実務では、全商品を以下の4グループに分けて、グループごとにRPP広告の方針を変える運用が効果的です。
| グループ | 条件 | RPP広告の方針 |
|---|---|---|
| A:主力商品 | 高粗利 × 高転換率 | 積極投資。入札単価を引き上げて上位表示を狙う |
| B:育成商品 | 高粗利 × 低転換率 | まずページ改善で転換率を上げてからRPPに投資 |
| C:薄利商品 | 低粗利 × 高転換率 | 低CPC+除外設定を徹底し、無駄を削って運用 |
| D:対象外 | 低粗利 × 低転換率 | RPP広告の対象から外す |
ある食品ジャンルの店舗様では、全商品をこの4グループに仕分けた結果、広告対象を全体の約40%に絞り込みました。広告費の総額は変えていないのに、集中投下したことで主力商品のROASが280%から520%に改善しています。
特にBグループ(高粗利×低転換率)は、RPP広告への投資より先に商品ページの改善が効きます。スマホでの転換率を高めるページ構成は売れる商品ページの構成とは?スマホ転換率を上げるデザインのコツで解説しています。
ステップ3:イベント期間の入札単価調整
楽天市場では、イベント期間中にモール全体のアクセスが急増します。弊社、株式会社クロス・プロップワークスが2025年4月に実施したEC利用実態調査(対象:3,441名)では、楽天市場ユーザーの45.7%が「楽天スーパーSALE期間」に購入しており、33.0%が「お買い物マラソン期間」に購入していると回答しています。Amazonの「必要なタイミングで買う」(61.1%)と比べると、楽天市場はイベントに購買が集中する傾向が際立っていることがわかります。
この特性を踏まえると、RPP広告の入札単価は「平時」と「イベント期」で明確に切り替える必要があります。
イベント期間中はCPCの相場が上がりますが、それ以上に転換率が上がるため、ROASはむしろ通常期より良くなる傾向があります。私たちが支援する店舗様(2024年度実績・対象30店舗)では、スーパーSALE期間中のRPP広告ROASが通常期の1.5〜2倍に向上するケースが約7割を占めました。
具体的な調整の目安としては、以下のような運用が効果的です。
スーパーSALE期間:
主力商品(Aグループ)の入札単価を通常の1.5〜2倍に引き上げる。この期間は「広告費を惜しまない」が鉄則
お買い物マラソン期間:
主力商品を1.2〜1.5倍程度に。スーパーSALEほどの爆発力はないが、安定した購買需要がある
5と0のつく日:
入札単価はそのままでも、ポイント倍率アップと連動させることで転換率が自然に上がる。クーポン併用も有効
逆に、イベントの谷間(イベント直後の数日間)は、ユーザーの購買意欲が一時的に下がるため、入札単価を通常より少し抑える判断も有効です。この「緩急をつけた入札管理」ができるかどうかで、月間のRPP広告の収支は大きく変わります。
なお、イベント本番で最大の成果を出すには、入札調整だけでなく在庫・クーポン・事前告知まで含めた準備が欠かせません。準備すべき項目は楽天スーパーSALEで売上を最大化する事前準備チェックリストにまとめています。
無駄なクリックを防ぐ「除外設定」の実践
RPP広告の費用対効果を上げるもうひとつの柱が、除外キーワードの設定です。入札単価の最適化が「攻め」だとすれば、除外設定は「守り」にあたります。どちらか片方だけでは、広告費を効率的に使い切ることはできません。
なぜ除外設定が必要なのか
RPP広告は、商品名やキャッチコピーに含まれるキーワードに基づいて自動的に配信されます。つまり、店舗側が意図していないキーワードでも、商品名の一部が含まれていれば広告が表示される可能性があります。
例を挙げます。「オーガニック コットン タオル ギフトセット 今治 送料無料」という商品名の場合、「今治 タオル」で検索したユーザーに広告が表示されるのは狙いどおりです。しかし、「コットン 生地 手芸」や「オーガニック 食品」のような、まったく購買意図が異なる検索にも広告が引っかかる可能性があります。
こうした「表示はされるが買われないクリック」が積み重なると、広告費だけが消化され、ROASが下がっていきます。ある雑貨店舗様では、除外キーワードを30件追加しただけで、月間のRPP広告費が約15%削減され、ROASが同じ予算内で1.3倍に改善しました。
除外キーワードの見つけ方
除外すべきキーワードは、RMSの「パフォーマンスレポート」から見つけることができます。具体的な手順は以下のとおりです。
RMSの広告管理画面から、RPP広告のパフォーマンスレポートをダウンロードします。レポートにはキーワードごとのインプレッション数、クリック数、転換率、ROASが記録されています。

レポートを「クリック数が多い順」に並べ替え、上位のキーワードを確認します。クリック数が多いのに転換率がゼロ、もしくは全体平均を大きく下回っているキーワードが、除外候補です。
除外候補のキーワードを1つずつ確認し、「このキーワードで検索する人は、自社の商品を買いたいと思っているか?」を判断します。明らかに購買意図が異なるもの、自社商品と関連性が低いものを除外キーワードに設定します。
この作業を月に1回行うだけで、RPP広告の「漏れ」はかなり防げます。最初は面倒に感じるかもしれませんが、一度設定した除外キーワードは蓄積されていくため、運用が進むほど精度が上がり、手間は減っていきます。
ここで触れたパフォーマンスレポートの出力など、RMSの基本操作に不安がある方は【初心者向け】RMSの基本操作ガイド|受注処理から商品登録までも併せてご確認ください。
除外設定で注意すべきポイント
除外キーワードの設定には、いくつか気をつけるべき点があります。
1つ目は、除外しすぎないことです。少しでも転換率が低いキーワードをすべて除外してしまうと、広告の配信対象が極端に狭まり、そもそもインプレッションが発生しなくなります。除外の判断基準としては、「一定期間(2〜4週間)のデータで、クリック数が20件以上あるのに転換がゼロ」のキーワードを優先的に除外する、というルールが実務的です。あるアパレル店舗様では除外設定を一気に50件以上追加した結果、インプレッションが前月比40%減少し、かえって売上機会を逃したケースもありました。「守り」を固めすぎて「攻め」の間口を潰さないよう、段階的に追加していくことが大切です。
2つ目は、商品名自体を見直すことも併せて検討することです。除外キーワードをいくら設定しても、商品名に関連性の低い単語が含まれていれば、新たな不要キーワードが次々と生まれます。根本的な対策として、商品名の構成を見直し、関連性の高いキーワードだけで商品名を構成することが、RPP広告の除外設定と表裏一体の施策になります。
明日から始めるRPP広告改善アクション
最後に、この記事の内容をもとに、すぐに着手できるアクションを時間軸ごとに整理します。
今週中にやること
1. 全商品のRPP広告レポートをダウンロードし、ROASが目標を下回っている商品を特定する
RMSの広告管理画面から直近30日間のパフォーマンスレポートを出力し、商品ごとのROASを一覧化します。目標ROASを下回っている商品は、入札単価の引き下げか、RPP広告の対象からの除外を検討してください。
2. 除外キーワードを最低10件設定する
パフォーマンスレポートから、クリック数が多く転換率がゼロのキーワードを抽出し、除外設定を行います。初回は10件を目標に。これだけでも無駄なクリック費用が目に見えて減ります。
今月中にやること
3. 全商品をA〜Dの4グループに分類し、グループ別の入札単価を設定する
粗利率と転換率をもとに商品を分類し、グループごとに入札方針を決めます。特にDグループ(低粗利×低転換率)の商品をRPP広告から外すことで、予算を主力商品に集中させる効果が生まれます。
4. 次回イベントに向けた入札単価の調整計画を立てる
直近のスーパーSALEまたはお買い物マラソンに向けて、主力商品の入札単価をいつ、いくらに引き上げるかを事前に決めておきます。イベント開始後にバタバタと調整するのではなく、事前に計画しておくことで、イベント初日から最大効果を発揮できます。
3か月以内に取り組むこと
5. RPP広告の「出口戦略」を立てる
主力商品ごとに、自然検索で上位表示されるまでのロードマップを描きます。「自然検索で1ページ目に入ったら、RPP広告の入札単価を段階的に下げ、利益率を押し上げる」という運用ルールをあらかじめ設定しておくのが理想です。
最終的なゴールは、広告を回し続けることではなく、「広告がなくても売れ続ける状態」を作ること。この出口を見据えて運用するのと、漫然と広告を回し続けるのとでは、半年後の利益構造に決定的な差が生まれます。
RPP広告の運用を「仕組み化」する週次チェックリスト
RPP広告は、一度設定して終わりではなく、継続的な調整が成果を左右します。しかし、忙しい店舗運営の中で毎日広告管理画面に張り付くのは現実的ではありません。週に1回、30分のチェックを習慣にすることで、大きなズレは防げます。
消化ペースの確認:
月間予算に対して、消化ペースが早すぎないか、遅すぎないかを確認。月の半ばで予算の70%以上を消化している場合は、入札単価が高すぎる可能性がある
ROASの確認:
商品グループ別(A〜D)のROASを確認し、目標を大きく下回っているグループの入札単価を調整
除外キーワードの追加:
直近1週間で、クリックされたが転換しなかったキーワードを確認し、除外候補をピックアップ
イベント前の準備:
翌週にイベント(お買い物マラソン、5と0のつく日など)が控えている場合、主力商品の入札単価引き上げスケジュールを設定
この4つの項目を週次で回すだけで、RPP広告は「放置型」から「改善型」の運用に切り替わります。あるアパレル店舗様では、この週次チェックを3か月間継続した結果、RPP広告のROASが320%から580%に改善し、同じ広告予算で月間売上が約1.4倍に成長しました。
まとめ:RPP広告は「使い方」で利益を生む武器にも、コスト垂れ流しにもなる
RPP広告は、楽天市場で売上を伸ばすための強力なツールです。しかし、入札単価の設定が甘かったり、除外キーワードを放置していたりすると、広告費だけが消えていく「コストセンター」に変わってしまいます。
本記事でお伝えした内容を一言でまとめるなら、「商品ごとの利益構造から逆算して入札し、無駄なクリックを除外し、イベント連動で緩急をつける」。この3つを押さえるだけで、RPP広告の収支は目に見えて変わります。
そして忘れてはいけないのは、RPP広告の最終ゴールは「広告で売ること」ではなく、「広告をきっかけに自然検索で売れる状態を作ること」です。このゴールを見据えて運用できれば、RPP広告は「コスト」ではなく「投資」として機能し始めます。
RPP広告で成果を出すには、入札単価や除外設定の調整だけでなく、イベント連動、そして広告実績を自然検索の順位改善につなげる出口戦略までを一つの流れとして設計することが重要です。
✓ 商品別の利益構造に基づく入札単価・予算設計
✓ 除外設定・商品名改善による広告費のムダ削減
✓ 広告依存から脱却する自然検索育成の出口設計
クロス・プロップワークスでは、データ分析をもとに店舗ごとの課題を整理し、検索流入から購入・リピートまでを一貫して支援します。


